一
そして夏休み手前、最後の水曜日。
「・・・誰もいない」
珍しくスムーズに潜入成功、と思いきや最近何だか騒がしかった物理準備室は今日はやけにシーンと静かで、廊下を歩いてきて扉からそっと中を窺えば中には誰もいなかった。
折角、腕章たちに見つからずに来れた上に、恐ろしい男子高生にも出くわさなかったというのに。
さっぱりお預けになっていたクレープに、最後の最後もあり付けなかったとはガックリと項垂れた。
「・・クレープ」
食べたかったなぁと呟きながら木漏れ日の差し込む窓を開けて、そよそよと入る微風に溜息を漏らす。
手を付いた壁が夏の暑さに少し火照った肌に心地よい。
何だか眠くなってきてしまった。
「・・・・・」
ここで寝たらさすがに見つかるだろう。
帰ろうかなと見渡す視界に、白い箱が目に映る。
そっと近づいてパタンと扉を開ければ、ひんやりと白い冷気が流れ出してきた。
そして目に映るのは、涼しげな色合いのソーダアイス。
クレープが手に入らなかったので、仕方が無いからコチラをいただいてしまおう。
図々しいにも程がある言い訳を脳内でしつつ、暑さに参りかけた頭で即決して一本拝借した。
「・・・おいしい」
シャリシャリと口の中で細かく砕けて溶けていく周りの氷も、爽やかさと混じったバニラの甘さもたまらない。
準備室の奥、冷蔵庫の隣の隙間に体を潜り込ませて、ペッタリと床に座り込む。
薄暗くひんやりとした空間は、涼しさも相まって体から徐々に力を奪っていく。
少しだけ、ほんのちょっとだけ休んで、そうしたら帰ろう。
見つからないようにと伸ばしていた足を引き寄せて、そのままトンと頭を壁に預けた。
遠く、窓の外から蝉の鳴く声が静かな部屋に響いていた。
「うげ、気持ち悪・・」
夏の天気は変わりやすい。
空に雲が現れてあれよあれよという間に真っ暗になったと思えば、思ってもみないほどの勢いで大粒の雨が降ってきた。
うっかり屋上で寝こけていたユーリは、突然のどしゃ降りに跳ね起きて慌てて屋内に避難するも髪も制服もブーツの中もすっかり濡れて、まとわりつく気持ち悪さだった。
「あれ、セーネンまだいたの?・・って、すっかり濡れ鼠ね」
廊下の手洗い場でブーツを脱いで中の水を捨て、髪をまとめて絞っていれば廊下の向こうから白衣にサンダルの足音をペタンペタンと鳴らして、レイヴンが歩いてくる。
その横顔にぴかっと光が当たり、その廊下を照らした稲光に二人して窓の外を見た。
数秒後に聞こえる轟音に顔を顰めれば、レイヴンが苦笑する。
「まー、夏の雨なら少し待てばカラッとまた晴れるでしょ」
「っつっても、いつ止むんだよコレ・・」
これじゃ帰れねーと呟けば、きょとんとした顔を向けられて更に顔を顰める。
「・・・なんだよ、おっさん」
「え、いやいやっほら、最近水曜はずっとうちにいたから今日もてっきり寄って行くんだと思ってたんだけど・・」
言われて、そーいや今日は水曜日だったかと思い出す。
夏休みが近づくにつれて徐々に授業がフリーダムになっていき、曜日感覚が薄れていた。
うちって、あそこはあんたんちかよと思いつつ、先を歩くレイヴンについていった。
「さすがに、この天気じゃぁちゃんは来れないわねー」
「こんな天気じゃなくとも、最近あんまし来なかったじゃねーか」
今週から夏休みなのに、とがっかりしたように準備室の扉を開けたレイヴンが急に立ち止まったせいで、ユーリは勢いを殺せずにそのままその背中にぶつかった。
「って・・おっさん、急に立ち止まんなよな」
「・・・えっと、セーネンは今ここに来たのよね?」
「・・は?」
レイヴンがぼけっと突っ立っているその肩越しに中を眺めて、その視線の先に気が付く。
激しい雨で、床が水浸しだった。
「あーあー、何やってんだよ」
バタバタとうるさくはためくカーテンを避けて、今もなお激しく吹き込む雨に拭いたばかりの手と頭を濡らされながらユーリは窓を閉めた。
雨音が少しだけ遠ざかり、準備室の中に奇妙な沈黙が流れる。
「モップどこだ?ぞーきんでもいいけど・・おっさん?おい、聞いてるのかよ」
「あ、えっと雑巾ね、雑巾・・・」
呆けた顔をしていたレイヴンが慌てたように動き出して、そして準備室の奥で再び立ち止まるのが見えた。
冷蔵庫の脇を見下ろして、口に手を当てて固まっている。
あーもー面倒くせーなぁと後ろ頭に手をやりながら、そちらに歩き出して名前を呼ぼうとすれば、ハッと焦ったような顔がこちらを向いておもむろにその人差し指を口元に当てて、シーッと訴えられる。
「・・ゴキブリでもいんのか?」
「ちょ、セーネン!!シーッってば!!」
何なんだよと近づいて、レイヴンが呆然と見下ろしていた場所に視線を向けて・・、ユーリは目を見開いた。
すよすよと、外から鳴り響く轟音にも気づかないまま寝入っている少女が一人。
そんな窮屈な場所でよく眠れるなと言いたいくらいに、小さく縮こまって冷蔵庫の脇の隙間で壁にもたれて眠っている。
「・・・どーすんだよ、コレ」
「・・・どーすれば良いと思う?セーネン」
俺に聞くなと言いたい。
改めて見れば、本当にコンパクトに収まっていてちょっと面白かった。
目の前に屈んで、いつもは速攻で逃げられる相手の顔をしげしげと眺める。
木を伝っていく相手の後ろ姿を思い出して、よくこんな細い腕でと思う。
小さい手に長い睫・・吐息を漏らす口元。
「雨が止んだら起こしてあげようかね」
横に立ってを見下ろすレイヴンの目がいつになく優しいもので、ユーリも頷いた。
「・・・ん・・?」
ぼんやりと浮上した意識に、薄らを目を開ける。
薄暗い周囲に、部屋の電気を付けないとと寝ぼけたまま無意識に立ち上がろうと体を動かす。
パサリ、と軽い音がして体の上から何かが滑り落ちた。
「・・ん・?」
それを手に取ろうと体をさらに動かしかけて、ギシリと軋む体に瞬きを繰り返す。
きょろきょろと辺りを見回して、どこだろうココとやっと回転しだした脳で考えていれば、視界の端で何かが動いた。
「ん?起きたのか」
「あ、おそよーさん、ちゃん」
良く眠れたー?と声をかけられて、瞬間ハッと目を見開いた。
慌てて、立ち上がろうとして凝り固まった体が傾いで、壁にゴツンと側頭部をぶつける。
痛いと打ち付けた場所を擦りながら、足元に目を向ければ白と青の服が散らばっていた。
制服のブレザーと、白衣だ。
「寝ぼけすぎだろ・・大丈夫か?」
ゴツゴツと鳴る足音は聞き覚えがあり過ぎて反射的に後ずさろうとするも、それを見越したかのように先に手首を掴まれる。
やばい、寝過ぎてしまった、しかもあっさり捕まっているとあわあわと目の前の相手に視線を向ける。
視線の先に、開襟し過ぎな白シャツから覗く健康的な肌が見えて思わずさっと視線を逸らせば、手首を掴まれる手にぐっと力が込められた。
そおっとその顔を窺うように見上げれば、意地悪そうに口の端を引き上げた相手と目が合った。
「・・・やっと、捕まえたぜ」
恐ろしい宣告に、ひっと息を飲む。
「ちょっとセーネン。ちゃんが怖がってるじゃないの」
窓の傍で椅子に座っていた、白衣を脱いでラフなシャツ姿のレイヴンが呆れたように声をかけてくるのに、縋るような視線を向けてしまった。
手首を取り戻そうとするも、がっちり掴まれた手はそれでも離れない。
「離してあげなさいよ」
「離したら、逃げんだろ」
当たり前のように言われて、そりゃそうだと頷きかけて再び上から注がれる捕食者のような視線に、びしっと固まる。
誤魔化すように、小さく首を横に振ってみた。
「・・・ふぅん?」
全くこれっぽっちも信用されていない。
くいっと引かれた手に、は諦めてとぼとぼと連行された。
「いらっしゃい、ちゃん。久しぶりー」
連れていかれた先、目の前のレイヴンは全くいつも通りにへらっと笑っている。
「・・・・久しぶり・・」
やっぱり校長室にドナドナかなと思っているのに、手首を掴んでいる男子高生はその場に留まって、それ以上動かない。
もしくは、その内あの腕章たちが迎えに来るのを待っているのかもしれないと、は顔を暗くした。
「おら、おっさんさっさと聞けよ。あんたが聞かないなら俺が聞くけど」
「えー・・何かおっさん、かわいそうになってきちゃった」
「・・・オイコラ」
隣から冷気と言うか殺気というか、そんなものが迸ったように感じる。
タイミング良く外で雷が光って、はビクッと肩を揺らした。
「まあまあ、分かったわよ。作ってあげるから、セーネンはそろそろちゃんの手を放してあげなさいよ」
「はぁあ?・・・なんだよそれ」
俺の今までの苦労はいったい何だったんだと、疲れ切った声が降ってくる。
一体、何のことやら話が見えずに二人の顔を交互に見れば、レイヴンは苦笑して頭を撫でてくるし、隣の男子高生からは恨みがましい目で睨まれる。
全く、訳がわからない。
「・・・ったく。なら、おっさん早く作れよ」
「分かった、分かったわよ」
立ち上がったレイヴンの背を片手でぐいぐいと簡易キッチンの方に押し出して、黒髪の男子はどっかりと空いた椅子に座り込んだ。
・・手首はいまだ掴まれたままだ。
「えっと・・離し・・」
あん?とでも言いたそうな目が、こちらを見上げてくる。
は押し黙った。
ザーザーと降る雨の音が、急に近くなった気がして所在無く窓の外に目を向ける。
「・・・あんた」
手首をくっと引かれて、見下ろせば組んだ膝に頬杖をついた相手がじっとこっちを見ていた。
「何でわざわざ忍び込んでまで・・・おっさんのクレープ食べに来んだ?」
「?・・・美味しいから」
あっさりと答えれば、はぁああっと顔を抑えて溜息を吐かれる。
でもそれ以外に答えは無い。
「・・・・・美味い?」
「??・・・うん、美味しいよ」
最近食べられてないけど、と答えればその顔がむすっとしたものになる。
てっきりまた何処から来たのかと詰問でもされるのかと思っていたが、様子の違う相手に何だ?と首を傾げれば、何故かふてくされたような顔をした相手にぐいっと更に強く手首を引っ張られた。
「?!ぅあ、あぶなっ・・!!」
倒れ込みそうになって慌てて壁に付こうとした方の手もとられ、結局相手の上にのしかかるような格好になる。
相手の胸元にぶつけた顔を顰めて急いで立ち上がろうとする前に、はーっと耳元で溜息を吐かれたと思えば腰にぐっと腕が回された。
立ち上がれない、上に眼前の肌蹴たシャツに体温がぐあっと上がる。
「何する・・離、せ」
「却下」
「!?」
カツンと肩に相手の顎が乗せられる。
何だ、何なんだこの状態。
ひぃいと内心悲鳴を上げて、却下と言い放った相手の顔を見ようとすれば、ちらとこちらを向いた瞳が近すぎて思わず仰け反る。
黒い髪だから黒い瞳かと思えば、近いそれが少し紫がかっていて一瞬、綺麗だなと思うも、その近すぎる瞳がすっと細められてギクリと体を強張らせた。
「とって喰いやしねーよ」
しそうだよっ!違うというならその表情は何だ!と逃げ腰になるも、がっしりと腰に回された腕は離れない。
片足だけ相手の膝の上に乗り上げたままの中途半端な姿勢も辛い。
いい加減にしてくれともがく攻防戦を繰り広げていれば、背後でガタタッと音がした。
振り返れば、片手にクレープを持ったレイヴンの顔が引きつっている。
「やっと出来たか、おっさん」
「って!!何やってんのよセーネン!!!!!」
「早く、くれ」
片腕を拘束のために残しつつ、ひらっと伸ばされたもう片方の手にレイヴンが戸惑いながら持っていたクレープを乗せる。
男子学生の雰囲気が、急に変わった。
さっきより明らかに目の色が違う。
言うなればうっとり?いや、キラキラといったところだろうか。
その宝石みたいな瞳が向けられているその先にあるのは、その手に持っているクレープで。
「やっと手に入れたぜ・・・」
「・・・・・」
呆然と見つめるの肩のあたりで嬉しそうにクレープに齧りつく男子に、は目が丸くなった。
よっぽどまぬけな顔をしていたのだろう、もっしゃもっしゃと食べている相手の視線がやっと気が付いたかのようにコチラを見て、ん?と瞬きを繰り返す。
ぽかんと見ていれば、その動きが停止する。
「・・・・・」
「あ、いや・・何でも・・」
一瞬迷うそぶりをみせた相手がサッと動き出す。
長い指先がクレープの中のクリームをそっと掬うのが見え、何をする気だと身構える間も無かった。
「っんむ?!」
は口の中に突っ込まれたものに目を見開く。
口の中でふわりと溶ける生クリームの甘さを感じている余裕など無い。
突っ込まれた指先を思わず噛みそうになって、もがっと喉の奥で唸る。
「今回はコレで我慢、な」
本当は一口もやりたかねーんだけど、と真顔で続ける相手に声も出ない。
口の中に生クリームだけ残して、舌先を撫でた指先が引き抜かれていった。
の思考回路が完全に切れて、相手の顔を見つめたまま静止する。
「確かに、こりゃ美味いな」
何でも無さそうな顔で指先に残ったクリームを舐めとる相手を見て、一時停止したの頭が瞬間沸騰した。
「あっ、ぇ・・な、な・・」
真っ赤な顔で言葉にならない声を発していれば、ん?とまたこちらを見つつ残りのクレープに齧りつく男子学生の後ろで、レイヴンがふらっと傾いで行った。
ガターンと机が派手な音を立てて、プリントだか何だかの紙の束がバサァッと宙に舞う。
「あにしてんだよ、おっさん」
もっしゃもっしゃ、ごっくんとペロリとクレープを平らげた男子の呆れたような声に、机に片手をついてふらりとレイヴンが立ち上がる。
「セーネン」
「あーあー、まだ床湿ってるっつーのに・・」
「・・セーネン」
俯いたレイヴンの顔が静かにあげられて、大分険しいその顔にの顔に上った血の気が少し引いた。
「もう、セーネンにはクレープ・・・」
「・・ん?」
「・・っ作ってなんかあげないんだからーーーーーーーーー!!!」
「はっ?!ちょ、何で・・おいっ」
慌てたような男子の声も聞かずに脇を通り過ぎて、バターンと開けられた扉を抜けてレイヴンのサンダルの走る足音が遠ざかって行った。
何だろうこの状態と最早展開についていけないが意識を遠くに飛ばしかければ、不意に回されていた腕が外れて体が自由になった。
よろめきながら急いでそこから離れて、椅子に座ったままの相手を警戒しながら後ずさっていれば、目の前の男子はがっくりと項垂れた。
「・・・クレープ」
今、食べたじゃないかと即座につっこみたくなった気持ちを抑えて、はぁあーと重い溜息を吐く相手を残し、はそっと教室を抜け出る。
いつの間にか止んでいた空は、疲れた一日を慰めるかのように淡い桃色をしていた。
「・・・・一体、何だったんだ・・・」
夏休みが始まり、アルフォンスに誘われエドワードとふざけあいつつ宿題も順調に進み、ウインリィも集まって賑やかに過ごしていれば、いつの間にやらその日はやってきていた。
「あ、きたきた。ー!」
涼しげなワンピースに白い大きなつばの帽子が似合うウインリィが公園で手を振っている。
手を振り返せば、そのまま駆け寄ってきた。
「ごめん、待たせちゃったかな?」
満面の笑みで大丈夫と首を振る彼女に笑い返して、歩き出すその横についていく。
「二人は?」
「色々準備があるんだって、もう先に行ってるよ」
「ウインリィは?」
「私の担当はもう終わったもの。今日は成果を見るだけよ」
作る工程に加わっていたらしいウィンリィは、最終調整は他のメンバーに任せたと言う。
「それにほら、どこでやるのかどうせあいつらのことだから言ってないでしょ」
大きく頷く。
あれだけ一緒に宿題をしたりして集まったのに、そういえば聞きそびれていたもなのだが、双方うっかり失念していたらしい。
さすが、しっかりもののウィンリィ・・と言いかけて、そういえばウィンリィもこの夏休み中に何度か会ってたよねとその横顔を見る。
「ふふふー。私はと一緒に行きたかったからあえて内緒にしてたんだ」
「あ・・そう」
一緒に行きたいだけなら、別に行く場所を教えてくれてもいいんじゃないかなとチラリと頭を過ったが、まあ嬉しそうな顔をしてるからいいかとその足にのんびりついていき・・・何となくその方角にある建物に、は足を止めた。
「どうしたの?」
「え、もしかして花火やる場所って、・・あそこ?」
遠慮がちに指差した建物を見て、首を傾げながらもウィンリィは笑顔で答えた。
「え?うん、私立St.ヴェスペリア学園だよ!」
「あー・・私ちょっと用事が・・」
忘れかけていた夏休み前の出来事に、そろりと踵を返そうとした腕をがっしりと捕まえられる。
視線を向けた先のウィンリィの表情は、もしかして今は夜じゃなくて真昼間かと思うほどに満面の笑顔だった。
「うん、って言ってくれたわよね?」
「あ・・えーっと・・」
「あ、ウインリィ、!」
「お前ら、遅い・・って何やってんだ?」
校門のところで来るのを待っててくれたのか、アルフォンスが手を振りエドワードが声をかけかけて、怪訝そうにその首を傾げた。
ずるずると女子の腕力とは思えない力で引きずられていたは、乾いた笑いを返すしかない。
「何でも無いわ、さあ行きましょう!」
にこにこと笑みを浮かべるウインリィの腕からは、どうしたって逃げられそうになかった。
いや、でもまあ、夏休みだし、いるわけないなと暗い廊下を進んで階段を上る。
夜の学校という肝試し的なシチュエーションも、今から行うイベント事でわくわくしているウインリィや兄弟を怖がらせられるはずもなく、賑やかな3人について行きながらだいぶ冷静になった頭でそう楽観的に結論付ける。
「もうみんなついてるの?」
ああ、と答えかけたエドワードの声を遮る、くぐもった悲鳴が聞こえて4人は何事かと暗い廊下を振り返った。
「何だろう、今の声」
「ちょっと見てくる。アルはここにいろよ」
「うん、気を付けてね」
さっと走り出したエドワードに、アルフォンスが答える。
何かあった時にと護衛を置いていく兄と、それが分かっている弟の見事な連携プレーだ。
「え・・無いわよね、」
ちょっと不安そうに漏らすウインリィの言いたいことが分かって、は何も答えぬままエドワードが曲がって行った廊下の暗がりを注視する。
と、またも悲鳴が上がった。
エドワードと、もう一人、高い女子の声だ。
3人顔を見合わせて、同じ方向に走り出す。
「エドー?」
「兄さん大丈夫?・・って・・」
先にたどり着いたアルフォンスが驚いたようにたたらを踏んで立ち止まる、その足元にいててと額を抑えて座り込むエドワードがいた。
その前にもう一人、こちらも頭を押さえて蹲る少女。
「・・・ったいわねぇ!!!どこ見て歩いてんのよ!!!」
かと思えば、その顔がさっと上げられて怒声が夜の校舎に響き渡った。
「リ、リタ・・一応あの静かに・・ということなので・・」
「そっちこそ、前向いて歩けよな!!」
「に、兄さん・・・・え、リタ?」
びっくりしたようにアルフォンスがその名前を繰り返し、エドワードは前を向いたまま固まった。
どうやら角で避けきれずにぶつかったらしく、尻餅をついていた二人がお互いに見合って目を見開いている。
「は?え、何であんたがここにいんのよ?!」
「はあっ?そりゃこっちのセリフだってのっ」
途端に険悪なムードになる二人に、アルフォンスともう一人角の向こう側にいたらしい女子がおろおろと声をかける。
「兄さん・・」
「もうリタ・・その二人とも、お怪我は無いんです・・?」
遠慮がちなその声を何処かで聞いたような気がして、は暗がりの中でまじまじとそんな相手を見て目を見開いた。
「え?・・・もしかして、エステル・・?」
「えっ・・?!どうしてここに・・??」
お互いびっくりして見つめあっていれば、座り込んだままのエドワードとリタがそれぞれをそれぞれ見上げて、ぽかんと口を開けていた。
「、知ってんのか・・?」
「あんたたち、知り合い?」
「え、ええ。そうなんです。困っていたところをちょっと助けていただいて・・」
うんうん、と頷き返せば何だか呆れたような顔で膝を払って立ち上がる、リタと呼ばれた相手にじろじろと見られる。
あれ、そういやこの子の名前、最近どっかで・・と記憶を手繰って、エドワードと喧嘩別れした相手だとやっと思い出した。
喧嘩別れ・・何かちょっと違うような気がするような・・まあいいかと、も相手を見つめ返す。
「何よ」
「いや・・えっと、何でもないよ」
「あ、そう」
そっけない。
腕組みをしてあっさりと顔をそむけた先、エドワードが何とも言えない表情をしている。
何となく何を考えているのか分かったが、何か言おうとしたエドワードが口を開きかけたその時、どこか遠くでかすかな音がした。
強気な少女がびくうっと、実に分かりやすい反応をする。
「今の音、何でしょう?」
「な、何でも無いに決まってるわ、きのせいよ、気のせい!!」
「・・・・ふーん」
黙っていれば良いのに、うっかりエドワードがもらした声にリタの眉が一気に吊り上った。
「もうこんな奴らほっといて、行こうエステルっ!!!」
「えっ、ちょっと待ってくださいリタ!・・あ、良ければ一緒に」
そういえば、ここは彼女たちの高校だったと釈然としない様子で、でもエドワードとアルフォンスも歩き出し、その後を付いていこうとしては足を止めた。
「あれ・・ウインリィ・・?」
気が付けば、彼女の姿が無い。
慌てて周囲を見渡すも、いつの間にいなくなったのかその姿が忽然と消えている。
「どうしたの?って・・そういえば、ウインリィは?」
「いねーのか?あいつのことだから、先に行ってるんじゃねーの」
エドワードがあっさりと言い、静かな廊下をもう一度見渡しても何もいる気配が無く、どうかしたのかと首を傾げるエステルに事情を話す。
「え?もう一人、です?」
「うん。水色のワンピースに白い帽子をかぶってるんだけど・・」
「・・すいません、見ていません」
「そっかぁ・・」
ということは、こちらに走ってくる途中ではぐれたのか、実験が気になって先に行ってしまったかなのだろう。
心配そうにこちらを見ながら、また歩を進める彼女にぴったりとくっついて、リタがぶつぶつと漏らしているのが聞こえる。
「ちょっと・・もう止めてよね、そーいうの・・最初からいなかったとか、そういうオチもなしよ・・っ」
「・・・・・」
強気で勝気な見た目に反して、ホラー系が苦手らしい。
しがみつくリタの頭を優しくなでながら、エステルは屋上へと続く階段を上った。
ガチャリと扉を開ける。
「う・・わあ」
「げ、もう始めてるし」
「本当だ、でも綺麗だね」
たくさん並べられた筒から色とりどりの花火が噴水のように湧き出ている。
暗い夜空をそこだけ明るく照らしていて、エステルとは思わず見とれて立ち止まった。
エドワードとアルフォンス、それからリタは慌てたように自分の学校の所属チームの方に走っていく。
「・・きれいですね」
「・・うん」
手を組んでキラキラとした瞳で花火を見るエステルと、並んで立つ。
「そういえば、。あの制服、役に立ってます?」
「・・・・えっと、うん」
ふふふと笑うエステルは、実は何でもお見通しなんじゃないかと一瞬たじろぐ。
学校帰りのエステルが性質の悪そうな輩に絡まれているのを、たまたま通りかかったが追っ払い、お礼にとドーナッツ屋で奢ってもらい話の流れでお互いの学校の制服談義となったわけなのだが。
「もう、そう言うのなら私にも見せてください」
「え、あー・・いや」
「セーラー服のも可愛いですし、今のその私服も似合ってますけど・・」
そう言って、ちょっと拗ねたようにこちらを向くエステルも、今日は制服ではなくふんわりとした夏用の薄手のスカートにノースリーブにカーディガンという、夏の御嬢さんスタイルがとても良く似合っている。
は、危険そうな今日の集まりに合わせて、動きやすいデニムのパンツにTシャツだ。
セーラー服は実は苦手だったりする。
苦笑いを返していれば、はぁと可愛らしい溜息をこぼされてしまった。
「私も見たくてあげたのに・・・今度は私にも見せてくださいね」
「・・あ、うん・・今度・・・え?」
「本当ですよ、約束です!」
「え、いや、ちょっと待って」
小指を付きだしてくるエステルに困惑しつつも応えながら、さっきの言葉は聞き間違えかと首を傾げる。
今度は私に「も」と言ったような気がするが、他に誰か特定の輩に見せた覚えは・・・。
「絶対ですよ!・・だって、ユーリばかりずるいです」
「・・?」
「って、言われても、な」
「・・・ぇ、・・」
聞こえた声にぎょっとして振り返る前に、背後から回された腕が首元でしまる。
ついでと頭の上に乗せられた顎が、地味に痛い。
「いっ・・・」
ピシと固まれば、目の前のエステルが少し拗ねた顔をしてこちらを見上げてくる。
正確には、自分の頭上にいる相手を見ているのは分かったが、それより何より。
「ったく。まさかエステル経由だなんて思わなかったぜ」
「私も、まさかユーリが会ってるなんて知りもしませんでした」
「え、っとー・・」
「教えてくれても良かったじゃないですか」
「あー、悪かったって。てか、そもそもお前らが知り合いだったなんて、こっちは知らなかったんだし」
仕方ねーだろという声が、頭上から響いてくる。
「あの、そろそろ離し・・・」
「おっさん、邪魔!!!」
リタの怒声と共に、誰かがよろけながらこちらに近づいてくる。
「ん?エステル嬢ちゃんどったの?・・って、え?ちゃん??」
「レイヴン先生も知ってたんですよね・・見たんですよね・・」
「え?」
「え?じゃないです!の制服姿、です!」
え?え?と困惑したようにこちらの顔を見比べるレイヴンも、まさかエステルとが知り合いだったとは思いもよらなかったのだろう。
「はあ・・ったく。・・そんで、お前はどっちなんだよ」
「い、痛い・・」
ゴンゴンと顎がぶつけられて、脳天が鈍く痛む。
どっち、って何だと聞き返す前に、誰かが駆け足で近寄ってきた。
「来ていたのなら、声をかけてくださいと・・・え?」
「こんばんは、フレン。今日はありがとうございます」
「こ、んばんは・・ってユーリ!彼女は!!」
「ああ」
「ああ、って・・」
もう本当、何で今日来ちゃったんだろうと、は様々な表情を浮かべるメンバーに囲まれて項垂れる。
首に回った腕は一向に離してもらえそうに無い。
そういえば、何でこの人に追いかけまわされたのか、いまいちよく分からない。
「ユーリ。彼女を捕まえてくれたことには感謝する。先生方には僕の方から伝えておくから、その手を離し・・」
「まあまあ、フレンちゃん。今日は大目に見てあげてよ」
「しかし、先生!」
「捕まえるなんて、駄目ですフレン。は私の恩人でお友達なんです」
「え?そんな、でも・・」
戸惑う金髪の青年の顔がもう困惑一色に染め上げられる。
何だか、かわいそうになってきた。
「?って、おい・・何やってんだよ、お前。を離せよ」
「あ、エド」
もう、何だかどうでも良くなってきた頃に、花火の様子を見ていたはずのエドワードが探しに来てくれたのだが、その声が聞いたことないほど低くなった。
「どうしたのさ急に走り出して・・・え、?」
その後ろからアルフォンスも走り寄ってくる。
頭上の相手は沈黙したままだったのが、成程というつぶやきが聞こえた。
「おっさん、こいつの学校はアメストリスってとこみたいだぜ」
「アメストリス高校はリタがこちらに来る前に通っていたところですよ」
「あー、成程。そっか、あん時の・・」
一人、合点がいったように頷く頭上の相手を、エドワードが鬼の形相で睨みつけている。
何となく、不穏な気配が漂った。
「あ・・アル・・・・、アル??」
一色触発な雰囲気に思わずいつもの静止係に声をかけるが、エドワードの横で比較的優しい笑顔を浮かべているアルフォンスの、にこにことしているその顔がこの場にそぐわな過ぎては恐る恐るもう一度声をかける。
「ウインリィっ」
笑顔のまま、背後に声をかけている。
「どうしたのよアル・・何してんのよ、あんた・・」
「おーおー、こええな」
たたたっと近づいてきたウィンリィに、先に行っていたんだなと見つけてほっとするのもつかの間、ドスの聞いた声と共に工具を持つ手がぐっと強く握られて、の背筋に嫌な汗が伝った。
あれ、今日は火薬実験で、工具を使うシーンは無いよね、というか何処から出したのその工具・・・。
「はぁ・・全く。ユーリもそろそろ彼女を離してやったらどうだい」
「こいつ、離すとすぐに逃げんだよ」
「駄目ですよ、ユーリ。をいじめちゃ」
腰に手を当てたエステルの言葉にも、へいへいと答えるだけで背後から離れようとしない。
「・・・セーネン。今日手伝ったらって話、あれ無かったってことにしちゃうわよ」
何処から声を出したのか、聞いたことの無いほど静かな声がレイヴンがいる辺りから聞こえてきて、それまで拘束されていた腕はそれを聞いてパッと呆気なく離された。
すかさず伸びてきた2本の手に両腕を掴まれて引っ張られる。
エドワードとウィンリィが睨みつける先、ユーリと呼ばれた相手を改めて見遣る。
何となく、いやまさかと思いつつも何となく、確認をしたくて口を開いた。
「まさか・・・甘党・・・?」
「・・・悪いかよ」
と、いうことは、だ。
「え、まさか私が追いかけられた理由って・・クレープ食べちゃったから?あれ、君のだったの?」
「ええっ、はレイヴン先生のクレープを食べに来ていたんです?!」
「まさか、そんなことのために他校に侵入を?!」
の言葉に、エステルと金髪の男子が驚愕の声を上げる。
「いいのよ、あれはちゃんのクレープ」
「・・を、毎週食べに来るあんたのことを聞き出せたら、俺の分を作ってくれるっていうんで、な・・・それが、まさかあんたの逃げ足があんなに早いとは思わなかった」
あっさりと知らされる真実に、は開いた口がふさがらない。
まさか、この獰猛な狩猟犬をけしかけた犯人がレイヴンだったとは。
恨みがましくレイヴンを睨めば、出来心で・・ごめんね!手を顔の前でぴっと立てられる。
「何だかよく分かんねーけど・・・、あいつらみんな知り合いなのか?」
「この中で知ってるのは、エステルとレイヴンだけ」
首を振ってそう答えれば、ふーんと言ったエドワードの目がまた厳しく向けられる先、黒髪の男子高生がしれっとした顔をしている。
「・・ユーリ、ユーリ・ローウェルだ」
「あの、初めまして。私はエステリーゼと申します。あ、こっちはフレン、フレン・シーフォといいます」
自分で名乗る黒髪男子の後にエステルがこちら側に自己紹介と、横に立っていまだにどこからどう考えればいいのかと考え込む金髪男子の紹介をしてくる。
「ウィンリィ・ロックベルです」
「・・・・・」
「僕はアルフォンス・エルリック、こっちは兄の」
「エドワード・エルリック」
エステルに向かって挨拶をしたウインリィに続き、押し黙っていたエドワードの代わりにアルフォンスが自分と兄の分を紹介しようとして、やっとエドワードが口を開いた。
女子同士はにっこりと笑顔なのと対照的に、男子同士の自己紹介が何だか果たし状を叩きつけ合っているような雰囲気を醸し出している。
「全く、なにやってんのよあんた達。花火大会終わっちゃうわよ?」
何やらバチバチと散っている見えない火花の向こうで、ヒュルルルルーと良い音がした。
「え・・あ」
ドーンとそれなりに良い音がして、頭上で本物の火花がちらちらと瞬いて大輪の花を咲かせた。
思わずみんなで見上げてしまう。
「すごいです、私こんな近くて打ち上げ花火なんて見たこと無いです。さすがリタです!」
「うちのチームも、結構やるじゃない」
「灰も降ってくるでしょうし、気を付けてください」
「・・あ、そうですね」
かばうように頭に手を掲げるフレンの声を聞いているようで、エスエルは頭上の花火に見入っている。
その横でレイヴンがふらりとよろめいた。
「・・・静かにやるって・・おっさん聞いてたんだけどなー・・」
「もう、諦めろって」
これじゃあ、バレバレじゃないのと泣き崩れるレイヴンに、少しだけ同情したようなユーリの声が被さる。
「レイヴン、次の職場が決まったら教えてね」
そしたら、そこにクレープ食べに行くからとが続ければ、レイヴンはがっくりと項垂れた。
「俺たちんとこの打ち上げって、この次か?」
「そうだったね。大丈夫かな」
「ちょっと、こっちは平気なの?」
「あ、ウィンリィ、ちょっと見てよこれ・・・」
エドワードとアルフォンスが自分のチームに慌ただしく戻っていく。
ウインリィも様子を確認しに声をかければ、花火を打ち上げている方角から少し高めの少年くらいの声が焦ったようにその名前を呼び、ウインリィもまた自分のチームに戻って行った。
「あら、どうしたのかしら?」
「ジュ、ジュディスちゃん・・・」
ウィンリィの向かった方から、入れ替わりにやけに色っぽい女性が歩いてくる。
「今夜は、この場所を貸してくれてありがとう、レイヴン先生?」
「う・・うう、ジュディスちゃんのためなら仕方ないわ・・」
「そう?大丈夫なら良いのだけれど」
あの人は誰だろうと、露出度の高い服で優雅に歩いてきた女性をついガン見していれば、エステルがこそっと教えてくれる。
「あれは、公立ブラスティア工業学校の保険の先生です」
「ああ。ウィンリィのところの」
「おや、も来てたのかね」
「・・・げ」
「・・・・げ、は無いだろう」
やれやれと苦笑するのは、やエルリック兄弟の通うアメストリス高校の国語教師だった。
「マスタング先生が来ていたんですか・・・」
「さすがに生徒だけでこんな危険な催しをさせるわけにはいかないからな」
「ていうか、肝心のマルコー先生は?」
今日はそもそもマルコー先生管轄のU部主催の花火大会だ。
その姿が見えなくてきょろきょろと見渡せば、マスタングは首を振った。
「急な用事が入ってしまったそうだ。それで私が代理に来たわけだが・・・・これはこれは」
マスタングの視線の先を追ってまた、げっとなる。
「お美しい。私はアメストリス高校の国語教師をやっているロイ・マスタングという者ですが・・・どちらかの保護者の方ですか?」
「はじめまして、マスタング先生。私は公立ブラスティア工業学校の保険を担当してい」
「私は、ここの私立St.ヴェスペリア学園で物理を担当させてもらっています。レイヴンと申します」
ジュディスの自己紹介を遮ってレイヴンが割り込み、マスタングが握手を求めて伸ばした手をぐっと握る。
「・・・・・・似た者同士」
「同族嫌悪ってやつだな」
醜い大人の争いだ、と半眼でその光景を見ていれば、こちらも呆れたような低い声が聞こえる。
思わず、一歩離れる。
「・・・・何だ」
「・・そっちこそ・・何・・」
じりじりと離れた分だけ、じりじりと近づいてくる相手に警戒を強める。
どう考えてもからかっているようにしか見えない相手だが、捕まったら最後だと身構える体勢は崩せない。
睨みつけつつ、距離をとる。
「ふうん?」
にやにやとしている顔に、何かが閃いたのを不吉な予感で見上げる。
「ああ、この前指つっこんだのを怒ってるのか?」
「!!!!!」
こいつには羞恥心とかそういうものが無いのかと、悲鳴をあげたくなる。
ちなみに聞こえた悲鳴は自分のものでは無い。
「ゆ、ゆゆ指って・・・ユーリ?!に何したんです!!?」
「ん?ああ、物欲しそうにしてたんで・・」
「ゆゆゆ、ユーリ!!!・・今の話は本当かい・・君ってやつは本当に、一体っ何を・・」
「ちょ、お前ら落ち着けって・・・おい、フレンっ」
「僕は、君の態度や素行をいつも大目に見ていたつもりだ」
押し殺したような声で語りかけるような口調だったフレンはおもむろに顔を上げて、ユーリの胸ぐらを掴み詰め寄る。
胸元をつかまれて下がれないユーリは、落ち着けと両手を相手に向けて仰け反った。
「でもっ!それは、君は口や態度こそ悪いが、本当に悪いことはしないと思ってたから・・・なのに、なのに!!!」
「・・・自業自得だな」
その様子を見て、は赤くなった頬がすっかり冷めていくのを感じた。
頬に手を当てて柵にもたれかかり、夜空を眺める。
騒ぐ人たちの背後でまた、ひゅるひゅるひゅるーと特有の音を鳴らしながら火が打ちあがって、ドーンと空に鮮やかな花を咲かせた。
◆アトガキ
2014.6.19
流れは頭の中にあったんですが。
文章にするとどんどん長くなっていってしまい・・。
みんな自由に動き回り始めるともう、話が進まない進まない。
ふんわりとした終わりになってしまったけれど、これにて!
でも、この設定結構面白かったので、また何かネタが浮かんだら使いまわすかもしれません。
私もTOV&FAどちらも好きでこの設定で書いてみたいって方、どうぞー。
あ、ちなみにベッペ組は公式の学年設定(着替アイテムに書かれてる説明文)を使用。
主人公は、ユーリとフレンの一つ下でエステルと同じ高校2年生。
その更に一つ下に飛び級でエドとアル、二人はリタと同じ1年生設定です。
ウィンリィは・・・というか、公立ブラスティア工業学校自体は中学校的な位置なんだろうか。
・・・ていうか、まあユーリとフレンがすでに成人済なのに高校生してる時点で、何なんだ、ジュディスとかユーリより若いのに保険の先生とか本当何なんだ!みたいな、ベッペ組も結構カオスなんですね。
background by ヒバナ