「はぐれないように、手を繋いでもいいですか?」
「あ、はい」

午後の見回りで組むことになった物吉貞宗様ににこっと微笑まれれば否やという言葉が出てくるわけもなく、伸ばした手はそっと柔らかく握られてしまった。それもこれも、32番街がいつにない人混みだったからだ。仕方が無かったのだと言わせて欲しい。

「今年もみなさん楽しそうですね。何もなければいいんですが」

ふわふわと揺れる淡い前髪の下で苦笑しているのに同意する。楽しむだけならいいのだが、やはりどうにもお酒が入ったりいつもと違う格好をすることで陽気になり過ぎる者が出てきてしまうもの。今はまだお昼を過ぎたあたりでまだ日は高く明るいため、賑わってはいるものの目立ったトラブルはなさそうだ。

「何かあったらボクがお守りしますから心配はいりませんよ!」

任せてください!と自信たっぷりに胸を張った物吉貞宗様と、刀剣男士様と審神者様が7:3、・・いや8:2くらいの割合で入り混じり賑やかな街並みを抜けていく。

「あそこの魔女さんの飾りはかわいいですね、あ!かぼちゃパンが売ってるみたいですよ」
「おばけパンもかわいい」

あれがおいしそう、これもかわいいと、どうしてもいつもと違うハロウィン使用の街並みと品揃えに目が奪われてしまうが、これでも見回りという仕事中なので後で買いに来ようとのんびり話をしていれば、どこかから微かな泣き声が聞こえてきた。

「ん?・・あっちから泣き声が聞こえませんか?」
「え、どっちですか?」
「あの細い道の方ですかね。あれ、聞こえなくなっちゃいました・・けど誰か迷子がいるのかも」





→ 泣き声が聞こえてきた細い道に行く。

→ 気のせいだったのかもしれない。










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