早朝の”ヨーグルト”の鶴丸様といい、”白墨”の鶴丸様といい、普段はそう悪戯を仕出かさない方である鶴丸様にしてすでにこの状態だ。これ以上お菓子を持たずにうろつくべきではないと歌仙兼定様のアドバイスに従い、真っすぐ売店への廊下を進む。 「わっ!!!」 「っ・・・。う、”強力粉”の鶴丸様・・」 非常階段の扉が唐突に開いて現れた白い人影に反射的に足を止めてしまったのは敗因だろう。目の前に立ちはだかる相手はこちらの驚いてから顰められるまでの表情の変化をじっくり観察したのちに実に満足そうに破顔した。 笑うその揺れに合わせて、胸元でロールパンのチャームがぽんぽんと跳ねている。 「おっと、そうだ。とりっくおあとりぃと!!」 「くっ、やっぱり」 「その顔、きみ何も持っていないだろう?」 「そうですね!持ってませんねっ」 「ははっ、やけくそだな。・・ん?」 笑った顔がふと何かを見つけてぐっと近くなる。なんだなんだと下がる前にさっと手を掴まれた。じっと指先を見つめていた金色の眼がすっと細くなる。 「なるほどなぁ。そうだな、じゃあ俺は」 言うや否や、先ほどまでつけていたチャームを外し始めたかと思えばそれをこちらの上着のジッパーにつけてしまった。かと思えばふところをごそごそと漁って、自身には食パンのチャームを改めて付けている。 「今日一日、きみも”強力粉”だな!」 一体何がしたいのやら分からなかったが、とりあえず首を振ってその呼び名は丁重にお断りした。 | ||
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