「何それ」
レイヴンが持ってきた正方形の箱。
掴んでる部分にだけ丸い穴が開いていた。
それをトンと机の上に2箱置いてニンマリと笑う。
若干嫌な予感がした。
「やってきましたハッピーハロウィーン」
低くて渋い無駄にイイ声で皆の視線を集めたレイヴンが厳かに発表する。
「この箱の中にはおたくらが持ってるあんな衣装こんな衣装・・」
思わずギルドの面々を見る。
あんたら一体どんな変な衣装持ってるんだよという視線だ。
その中には正式なギルドメンバーではないものの、発足メンバーと古くから繋がりがあるという魔導器研究所の少女や別ギルドの海賊娘、帝国騎士団騎士団長から果ては皇族のお姫様までいるという、この空間のカオスさには慣れたつもりだった。
目が合ったエステルさんに困ったように微笑まれる。
お姫様ともあろうお方がどんな、・・ハロウィン向けの・・衣装をお持ちなんだと逆に気になってくるが、それを引いたら自分が着なくてはならない。
「俺が吟味に吟味を重ねたチョイスなので、引いたら責任もって着るよーに!」
ガサガサッと箱を振ってからレイヴンが高々と掲げた。
「さーて、コスプレ大会の始まりよーん!」
「・・言っちゃったね」
「ハロウィンどこいった」
それでもこんなお祭り騒ぎには慣れたのか慣らされたのか、諦めムードの一員が大人しくくじ引きの入った箱に手を伸ばしていく。
その顔はワクワクしたものや緊張したものから、さっさと終わらせたいといったものまで多種多様。
「ほらほらちゃんも、早く引かないと余り物になっちゃうわよ」
あちこちで落胆や顔を背けるものの声が上がる。
一体君たちは何を引いたのか、そこには何が書かれているのか。
躊躇っていても仕方が無い。
「腹ぁくくってやってやろうじゃないか」
「・・・ちゃん、最近セーネン味が増してるね」
ズボッと箱の穴に手を突っ込めば、どことなく残念そうな顔をしたレイヴンが目の前でオッサン悲しい、と声をこぼしたが、そんなこと知るものか。
散々けしかけてきた恨みは忘れないと睨みつけながら、一枚の紙をつまみ上げた。
二つ折りにされたそれをカサリと開く。
「・・・・・」
「ん、何々。ちゃんは一体何を引いたの」
悲しげな顔を一転、嬉々として覗き込んでくるレイヴン。
開いた紙に書いてあったのは・・・。
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