昏々と眠る少女を前に、ユリウスは唇を噛み締めじっと俯いていた。
大丈夫だという確信と、もう目を醒まさないかもしれないという絶望が交互に彼を襲う。知らず知らずに手に力を籠めているせいで、爪には血が滲んでいた。
どのくらい時間が経ったのだろうか。永遠にも思えた長い時の中、ベッドの上の少女が身動ぎした。
はっとして顔を上げた彼の前で、長い睫毛が震える。軈て、少女はゆっくりと目を開けた。
「………ユリウス?」
ぼんやりとした表情。まだ状況が理解出来ていないのであろう彼女を、ユリウスは何も言わず引き寄せた。
「…………アリス」
温もりを腕に閉じ込めても。
まだ、あの時の冷たい感触が残っているようで、腕に益々力を籠めた。
ややあって、温もりがふるりと震える。
「私………私、」
「何も言うな」
小刻みに痙攣する躯を一層強く抱き締めた。
アリスの顔を肩口に押し付けたせいか、じわりと濡れた感触が拡がる。声にならない嗚咽を噛み殺す彼女に、無言であやすように背中を叩いた。
「…………肝が冷えた」
「………ごめんなさい、ユリウス。ごめんなさい」
でも、怖かったの、とアリスは泣きじゃくった。
怖かった。貴方を喪うのが。貴方が失われるのが。
怖い。恐い。
置いて往かないで。
泣き止まない彼女の言葉に、ユリウスは一瞬痛みを堪えるように視線を床に落とした。ぐ、と手のひらを握り締める。
「………だからといって、お前がいなくなろうとするな」
「…………うん」
彼女は小さな声で、だがしっかりと返事をした。けれど、胸に巣食った冷たい感覚は中々消えない。
どちらも、互いを失うことを酷く恐れていて。
自分達はいつの間にこんなに依存していたのだろう。そんなことをちらりと思ったが、ユリウスは敢えてその先を考えなかった。
側に居てくれるなら、愛でも依存でも構わない。傍に居さえ、してくれるなら。
「頼むから」
血を吐くような思いで、ユリウスは告げた。
「私の目の前から、勝手にいなくなろうとしないでくれ………!」
有無を言わせず唇を押し付ける。口の中に、涙と血の味が拡がった。
◆(」°□°)」< のナトリウム侍さんよりいただきました!
「選ばない果てに」からの派生として、侍様がユリアリHAPPYENDを書いてくださいました!
アリスが無事生還して、ユリウスにぎゅーってしてもらう話ですよ!!
愛か依存か、ユリウスはどちらかと言えば依存されたら意外と喜ぶような気がします。
すいません、勝手な憶測です。
でも懐かれたら放っておけなさそうだし、頼られたら「仕方が無い」とか溜息吐きつつもしっかりフォローしてくれるだろうし。
そんなユリアリ、好きです。
ユリウスはいつもアリスのことを考えて心配していて欲しいです。
むっつり無表情の裏で、実はすごい焦ったり焼餅焼いてるとか思うと美味しいです。
・・・そして度が過ぎれば、最後はお説教ですね。
きっとこの後は体調が良くなるまでは、献身的に介護されるのは間違いないですね。
そしてすっかり良くなったアリスは、ユリウスにこんこんと説教をされるはず!
椅子に座ったユリウスの膝上で抱え込まれて、顔が近いわよユリウス、みたいなドギマギで顔を真っ赤にさせたアリスを、目線で捕らえたまま至近距離で説教してやってください。
幸せです、ありがとうございました侍様!
これからもよろしくお願いいたします<(_ _)>!!
相互リンクもさせていただいている、ナトリウム侍さんのサイトはコチラです。
(」°□°)」<
2013.02.09
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