もしも、夜と太陽が出会ったら






こいつが・・・。

フレンの髪が明るい陽射しみたいな明るさの金だとすれば、こいつのそれはそれより濃く、強く自身で輝く、それこそ太陽みたいな金色だった。
加えて、真っ直ぐに射抜くような。

・・睨まれてんのかね。

見たことも無いような金色の瞳が、突き刺すような視線でこっちを見ている。

こいつがエド・・・ワード。
が話していたエドってやつか。



俺より長い黒髪(はさらっさらだのつやっつやだの何だか言ってたけど)を結びもしない、後ろ姿が女見てーなやつ・・・

「ってか、・・・誰が目にも入らない程のミジンコどチビだぁああああっ」

「・・・まだ何も言ってねえけど」

会ってコンマ0秒で吠えた金髪の少年、エドワードを見て、ユーリは取り敢えずそう答えた。
から取り扱いの注意として、とにかく背丈を気にするお年頃だからそれだけは口にするな、面倒くさくなる、とだけ聞いていた。
聞いてはいた・・・が。

これ、注意のしようはあんのか・・・?

自爆して墓穴を掘った少年に、無駄な注意だったなと思いつつ鼓膜がまだ震えているような感覚を持て余す。

「兄さんってば、初めて会った人には指差す前に挨拶だろ!」

ガルルルと威嚇して下から睨みつけてくる相手に、さてどうすっかなーと頭をかいていれば、ガシャンガシャンガシャンと何やら重そうな金属音と少し高めの子供の声が聞こえて、ユーリは振り返った。
鎧だ。
自分より背が高い鎧が、元気良く走ってくる。
騎士団にもあんな重そうな全身鎧のやつはいないだろうと言うほどの金属の固まり。
走るのは相当体力いりそうだなと見送ればそれは自分の横を通り過ぎて・・・。
通り過ぎ様に何故か会釈される。
頭をかいていた手を側頭部にのせたまま、訳も分からずに取り敢えず首だけで会釈し返してみた。

「もう、兄さんったら何してんのさ!」

・・・・?ん?

兄さん。

「・・・・兄さん?」

空いていた右手で、鎧といまだ睨み上げてくる少年を交互に指差す。
何だか随分高い声だと思ったが、いや待て待て、成長しすぎやしないか。
その中の背丈、隣の兄さんとやらにもう少し分けてやれよ。
・・・・と、言ったつもりも無かったし、実際口には出していないのだが。

「だぁれえがぁ、弟にも踏み潰されそうな豆粒ドチビくあぁあああっっっ!!!!!!」

「・・・・・」

下町中・・もしかしたら帝都中に響き渡ったかもしれないその怒鳴り声に、自覚はあるんだなとユーリは思った。


「今の・・・エドか」

「「!」」

遅ーよと顔をしかめる前に、パッと顔を輝かせたエドワードと嬉しげな声しか分からないがその弟(仮)が駆け寄っていき、発しようとした言葉は喉の奥で消える。

「お前なっ!居なくなんなら居なくなるんで一言ぐらい声かけてけよっ」

「あ、ごめん、つい」

「まったく、兄さんが周りのものに夢中で勝手にうろついてたんでしょ」

「エドには聞こえてなかったみたいだから諦めたんだ。でも、アルフォンスには声かけたよな?」

「なんだよ・・・また居なくなったのかと思って心配した俺が馬鹿みたいじゃねーか」

うんと鎧を鳴らして元気良く頷く弟(仮)の横で、その兄であるはずのエドワードが不服そうに呟く。
ごめんごめんと悪びれもせず謝るを、見上げたエドワードが軽く睨んでそっぽを向いた。
拗ねたように口を尖らせるその金髪を小さく笑いながらわしゃわしゃと掻き混ぜるの姿に、ユーリは知らず視線を反らす。
姉、みたいなもんなのだろうと脳内で無意識に呟いてから、まるで言い聞かせているかのようだと気付いて溜息が出た。

「待たせて悪かった」

がこちらを向いたことで何やら賑やかだった二人もぴたりと話すのを止める。
一斉にこちらに向けられる三者三様の視線を感じてユーリは居心地悪く身じろぎをした。

「こっちが、この世界で世話になったユーリ、ユーリ・ローウェル」

「・・・・ども」

言い方が、引っ掛かった。
世話に「なった」と過去形で言われたことに、顔には出さずとも内心思いがけず動揺する。

「?・・どうかしたか?」

動揺を隠して返事を返したつもりだったが、こういう時、妙に鋭いがしばらく黙った末に小さく首を傾げて聞いてくる。
だが、言ったところで仕方の無い・・・そう、些細なことだ。

「いや、何でもねーよ。・・ユーリ・ローウェルだ、よろしくな」

「そう・・?んでこっちが」

「エドワード・エルリック」

「僕はアルフォンス・エルリックって言います。よろしくお願いします」

相変わらず挑戦的な目で名乗る少年と対称的に、弟(仮)くんは音をたてながらも丁寧におじぎをしてくる。

「まあ、何だ・・遠いとっからはるばる良く来たなって感じか。こっちで何か困ったことがあれば言えよ」

「ありがとうございます!」

やっぱり元気良く返事したのは弟(仮)くんだけだった。




◆アトガキ



2014.4.20



続く・・のかは未定。
ハガレン初期アニメの再放送を見てしまって、ああー懐かしい!と滾りました。
アニメはどっちかっていうと初期の、マスタングさんが大川さんボイスのバージョンが好きです。

ユーリもエドも性格似てる気がして、だからこそ同族嫌悪しそうだなとか。
エドはどう考えても、反発。
ユーリは年上な分、顔には出さず取り合えず観察。
いや、うん、それよりまずはその身長差だよね!とか。
・・・・楽しそうー・・・。
二人とも好きです。



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