broken egg



ピンポーン

「・・・はーい」

肩甲骨に届くか届かないかくらいの長さの髪を何となく手で梳きながら訪問客が誰かはともかくとしてドアを開けた。

「すいませーん、お宅のユ・・っと、えーと・・おねーさんですか?」

「え、どれどれアイツの姉ちゃん?・・いや小さいじゃん、妹さんか?」

「妹ちゃんか!何だよー、こんな美人の妹ちゃんいるなら紹介してくれてもいいのにな」

「美人・・てか、顔立ち似てるなー。そう思うとなんかアレだけど」

「んーまぁあいつも黙ってりゃーまーキレイどころ、だもんな」

・・・・、朝からやいのやいの・・・、

「うっせぇな、ガキども」

「・・そういうとこ似てるんすね」

「あ、ねえねえ妹ちゃん、お兄ちゃんいる?」

「・・は?」

「ユーリオニーチャン呼んでくれないかなー?」

口が悪いのはソックリだな、とか言いながらも何だか面白いものを見るかのように興味津々の視線がひぃふうみ・・。

「俺に、兄はいねえ」

「ぇ、じゃあえっと・・オトートさん呼んできてくれませんか?」

ユーリより声高いの、何かカワイイなー・・

やっと来たお休み、土曜日の朝。
寝苦しくっていつもより早く目が覚めたと思いきや、朝からどんな災難だ。
血管がブチ切れそうになってきた。
それもこれも寝起きが悪い愚弟のせいだ。
中途半端に空けて隙間から顔を覗かせていたその扉を抑えていた手をご近所迷惑も顧みずバアンと打ち付ける。
響く打突音に玄関前にたむろしてた野郎どもがびくつく。
そんな奴らにこれ以上声をかけるのも面倒だと舌打ちひとつ玄関の中、家の中へと向かって声を張り上げた。

「ユーーーリっ!!!早く起きろっつってんだろ、このくそ・弟!!!」




「・・何だってんだ」

「何だ、じゃねえだろ」

起きろとばかりにその太腿に上げた膝を裏からたたき込む。
後ろ頭をかきながら欠伸と共にもさもさと部屋から出てきたユーリは、うぉあっと声を上げて前方によろめいた。

「、あぶねえな。朝からご近所メーワク考えろよ

危なげなく体勢を整えて尚も欠伸を漏らしつつ見下ろす相手を半眼で見上げる。

「てめえのお仲間は揃いもそろって目玉が腐ってるから眼科紹介してやれよ」

「あー・・・・」

扉の向こうでこちらのやり取りを恐る恐る見ている同級生の方をチラと見て、ユーリはまたこっちを見下ろした。

「言ってなかったっけ」

そして、ポンと頭の上に左手のひらが乗せられた。

「コレ、うちの兄だから」

手え出したら噛まれるぞ、と言いながらふざけたような笑みを外に向けている、その手が頭上でポンポンと弾む。

「え゛、おニーサン?」

「いや、でも・・え」

言われた同級生ズの視線がこちらと隣に立つユーリを往復する。
主に、頭頂部辺りを。

「何か言いてえことがありそうだなぁ、あ?」

「あ、えっと・・」

「ユ、ユーリ、俺ら先、行くんで・・」

「おー・・オレも後から適当に顔出すわ」

土曜日は部活動か、部活仲間か?
・・いや、土曜日は授業があるじゃねえか・・。
頭の上に置かれた左手をガッっと掴む。

「ん?な・ん゛っ!?」

背負い投げ!とかしてこっから今すぐにでも放り出してやりたいが、がたいも身長もあっという間に抜かしやがった弟の腕を背負ったところで、向こうは足すら浮かない事実に泣きそうになるのでそれは諦めて思いっきりその手を下に引っ張った。
何だ?と引っ張られて前のめりになるその額に、己の額を思いっきりぶつける。

「っ、ってえ!」

ガツッと火花が散るような衝撃と、鈍く脳の奥まで響くような痛みがして思わず目を瞑る。

「っ・・、てめーも、さっさと用意して学校行きやがれ!!!」

土曜日の早朝、チュンチュンと平和に鳴いていたスズメがみんな飛び立っていった。




「なあ、フレン」

「?どうかしたの、?」

不思議そうにしながらも飲んでいたアイスレモンティーを置いて、フレンはこちらを向いてにこっと笑う。
弟と違って誠実そのものなかわいい弟分である。

「あー・・なんでフレンが弟じゃなかったんだろー」

ミルクティーに足したガムシロップを底に沈殿しないようにストローでぐるぐるとかき回していたのを、くわえてズズーと吸い上げる。
そのまま頬杖をつきながら向かいの相手から目をそらしてストローの端をガシガシと噛んでいれば、すっと視界に入ってきた手が噛むごとに揺れていたストローを掴んだ。
その指先から手の持ち主へと視線を上げる。
目線が合ったフレンは、相変わらず邪気のない笑顔でこちらを見ている。

「ストロー噛んじゃ駄目だろ」

「・・ん」

言って口から外すその指先がつと口を掠めていった。
取り上げられたストローをミルクティーに差しなおして、で?とその首が微かに傾けられる。

「僕はのこと、血は繋がってないけど家族みたいに思ってるよ」

言ってにこにことこちらを見るフレンにうっかり涙腺が綻びそうになった。

「あぁあー・・」

ごつんとファーストフード店のテーブルに額を打ち付けてそのまま小さく呻く。

「ちゃんと早起きだし、色んなこと頼まれてくれるし、こんなに頼りになるしっかりした弟ー」

うちのと交換して欲しいと呟いた声を聞いたのか、フレンがくすくすと笑う。

「またユーリとケンカしたの」

「ケンカなんてしてねーよ・・」

言いながら今朝のことを思い出せば、フツフツと怒りが沸き起こる。

「なあ、俺ってそんなに女に見える・・?」

「え」

聞かれたフレンは驚いたようにその青い目を丸くさせた。
何て答えようか戸惑うように動く口元をしばし見上げ、そしてまたテーブルに頬をつけた。

「あー・・いい、何でもない」

「あ、いや・・えっと、ユーリもそうだけど」

わたわたとどこか慌てたようにフレンが言い出すのを横目でじっと見上げながら待つ。
視線が合ったフレンはちょっと怯んだように赤い顔をして、そして口をもごもごと動かした。

の顔立ちはキレイだから」

「整形するか・・」

ぼそっと呟けば、え?!と驚いた声が聞こえ次の瞬間投げ出されていた両手をぎゅっと握られた。
今度はこっちが驚いて両手を包むように握るフレンを見上げ、ぎょっとする。

「ダメだよ、そんなこと!」

「え、あ、いや・・」

そんな何の益にもならなそうな散財をするつもりは今のところ毛頭ない。

「じょーだん・・だって」

「本当だね?」

真剣な顔でじっと見つめられて、じゃっかん仰け反りながら「お、おう・・」と返せば握られていた手はパッと離された。
そしてその手が伸びてきて、頭の上にぽんと置かれる。
優しく撫でる様に梳いてくる指先に、なんだかなぁと思いつつも目を閉じればほっとしたように息を吐いた気配がした。

「むー・・顔はまぁ親から譲り受けた大切な形見だし」

「うん」
「ンなことする気は無いけどさ」

「・・良かった」

宥める様に頭を撫でられる手に、溜息をつく。

「ユーリもそうなんだけど、お前ら俺の頭で遊び過ぎ」

「え?・・そんなつもりはないよ」

困ったように笑うフレンに、そうか?と胡乱気な目をむける。

「さらさらで、撫で心地が良いだけだよ」

「・・・あのな」

男が言われたって嬉しくもなんともねえ言葉に半眼になる。
そういや弟も面倒くさい面倒くさい言いながら、何故かずっと伸ばしている。
あいつの方がずっと女っぽいっての。
・・・後ろ姿だけな。
自分で自分の思ったことに何言ってんだとツッコミつつ、気持ち悪と腕をさすればフレンに「寒い?」と聞かれる。
ほんと、コイツは人のことをよく見ているし、よく気が付く。

「あー、フレンの彼女は幸せもんだな」

「・・えっ」

頭を撫でる手がびっくりしたように止まる。

「まあ、お前らもそんな年だもんな。青春」

若者めー、とニヤニヤと見上げつつテーブルに倒していた上半身をようやく起こして、んー、と背伸びをする。

「こんなとこで俺といないで、誰かカワイイ子とご飯とか行きゃいいんじゃねえの?」

折角の休みだしゆっくり外で食べるかと思いながら、何となくメールで声をかけたのは俺の方なんだけど。
どうなんだ?とからかう気持ちで見上げれば、何故か相手はむっとした顔をしていた。
?何でだ。

が、誘ってくれたから来たんだろ」

「あー、そうだよな。ゴメン」

かわいい弟分に意地悪言っちまったなとその金髪を手を伸ばしてわしゃわしゃと撫でる。
憮然とした顔でその手を受けていたフレンは唐突に真顔になった。



「ん?」

「さっきの話だけど」

「さっき?」

どれだ、と思いつつミルクティーを一口飲む。

「誰かに女っぽいって・・言われたの?」

「・・・ぁあ」

自分で言い出しといて、くだらないこと聞いたなと視線を逸らす。

「今朝なー、ユーリのダチがユーリ迎えに来たんだけどな」

「うん」

「ユーリが起きてこねーから仕方なくドア開けたらあいつら」


「・・・」

「人のこと、妹ちゃんだのオネーサンだの好き勝手に」

「・・・そう」

「あぁあ思い出すだに腹が立つ!」

ズコーと残りのミルクティーを思いっきり吸い上げれば、すごい音が店内に響く。

「あ、スイマセン」

少し静まった店内に気持ちばかり頭を下げて、ふと目の前の相手を見た。

「・・フレン?」

「・・あ、うん。ひどいな」

「だよなー・・」

取り繕うように笑う相手に首を傾げながらも、同意を得られてまあまあ怒りが収まった。

「・・やっぱもうちょっと髪切るか」

フレンぐらいにしてみようかと思ったが、フレンは笑みを浮かべたまま首を横に振った。

「・・・?」

「そのままでいいよ。はそのぐらいが似合ってる」

「・・・そーか?」

「うん」

にっこりと笑うフレンに押されて、まあいっかと髪を切るのも明後日に放り投げた。
ここら辺は兄弟2人似ているところで、面倒くさがりでついつい髪を伸ばしっぱなしにしてしまうのだ。
中途半端に切ると首筋がざわざわして気持ち悪いっていうのもある。

「・・ナゲットもいっこ買うか」

「・・・・!!!」

よろしく、とワンコインを渡せばフレンは本当に嬉しそうにレジに並びに行ってしまった。
肉が好きなフレンの分かりやすい喜びように、尻尾あったら振ってそうだなと思う。
笑顔かわいーなぁ、こういうところが弟に無いとこだよなー。
甘味を見せれば、尻尾を振るどころか虎視眈々と狙いにくる弟を思い浮かべる。
自分でも作れるくせに面倒くさがりで作らない。
料理は上手いんだけど、その他の家事は全部俺が担当である。
そういやフレンの料理最近食べてないな。
他は完璧なのにそこだけは何とも残念なフレンの手料理デットオアアライブ。

「はい、買ってきたよ・・?」

嬉しそうにナゲットの箱を持って戻ってきたフレンが不思議そうな顔をしたのに、何でもない、と手を振った。




ー」

キッチンからことことと何かを煮込む音がする。
終わりかけの夏にしがみつくように鳴いていたセミの音もさすがに弱まって、今は夜風と共に秋の虫の音が微かに聞こえてくる。
ちょっと肌寒くて丸まっていた体を動かせば、パサリと何かが身体からずれ落ちた感覚がした。
それでも程よい薄暗さに惰眠を貪っていたい気持ちと裏腹に聴覚が周りの音を拾い始める。

「起きろよ、・・フレン、起こしといて」

「うん」

うとうとと浮上と沈殿を繰り返す意識に耳慣れた声が混じってくる。

、起きてくれ

ゆさゆさと肩を揺すぶられて仕方なしに薄らと開いた目に映る、きらきらと眩しい。

「んー、邪魔」

「ぇ」

起き抜けの視界に眩しい金色を手で押しのけようとすれば、大分気の抜けたような声と共に身体にかけられていた手をそのままに相手の動きが止まる。
止まるんじゃなくて退いて欲しいんだけど。

「フレ?」

ン?と喉の奥で寝惚ける自分の声音に眠気が増してまた欠伸をもらす。
そっと退いた手が遠慮がちに頭を撫でていく。

「夕飯出来たって、ほら」

「ん」

何か変な様子ではあったが伸ばされた手に手を預ければ、ぐいっと引っ張り起こしてくれる。
そのまま勢いで前のめりに倒れそうになる身体がフレンにもたれかかった。
・・・固い。
胸板厚い。
ユーリもぶつぶつ言ってたけど、何でこいつこんながたい良くなれるんだろ。

「っ、・・?」

肩口に顔を預けたまま、無言でぺしぺしと胸板を叩いてみれば戸惑ったようなフレンの声が至近距離で聞こえてきた。

「むー、ユーリが言うのも分かるな」

「ユーリが?何?」

フレンの問いに応えないまま寄り掛かってまたうとうととしていれば、ふんわりとイイ匂いが漂ってきた。
どすどすと足音がするあたり、ユーリが動き回っているようだ。

「おら、起きろっての」

「いて」

動き回る足音が背後を通り過ぎるタイミングで軽く頭を小突いていく。
お前、兄に対してそんなことしていいと思ってんのか。
じっとりとフレンの肩に頭を乗せたまま、キッチンとリビングを行き来する弟を睨みつければこちらを見たユーリの顔が途端に面倒くさそうなものになる。

「食わねえなら、は後で自分でよそえよ」

「スイマセン、イタダキマス」

よし、とお玉を持ったまま頷くユーリを見て、やっと上半身を起こしてううーと伸びをした。




「んー、ごちそうさま」

「おそまつさん」

「ごちそうさまでした」

空っと食べ終わったお椀を前にパンと軽く両手を合わせて感謝の意を述べる。
もそもそとまだ最後の一口を食べているユーリが軽く返す。
同じようなタイミングで食べ終わったフレンが言って、立ち上がろうとする前にそのお椀を重ねて立ち上がった。

、ごちそうになったから僕が洗うよ」

「いーよ。昼付きあわせたし」

そのまま重ねた食器を持ってキッチンのシンクに置いて、先に鍋に残った分を空いた皿に移そうと底の深めの皿を探す。
んー、と喉の奥で無意識に声を出しながら上の方の棚にあるラーメン皿を見つけて、まあコレで良いかと手を伸ばしかけた。

「コレかい?」

「っ、あ」

その背後から伸びた手が目当てのものをひょいと持ち上げて手元に下してくる。
いきなり現れたそれに驚いて思わず後ろに仰け反った身体が、トンと背後の相手によって支えられた。

「あ、フレン」

びっくりさせるなよ、と器を受け取りながら背後に近づいていた気配に本当に気付いていなかったためまだドキドキとしている胸元を抑える。

「ごめん。やっぱり手伝おうかと思って」

そう言いながら王子様のようなスマイルを野郎に向けてくるフレンに、やっぱ弟にもう一匹欲しいなと思ったのは内緒だ。

「んじゃ、これに鍋の残りよそって、空いた鍋くれよ」

「分かった」

先にシンクに置いた皿や器を洗いつつ、ラップかけを指示して空いた鍋を受け取る。

「ありがとな。後でお茶でも・・」

も飲む?」

言いかけた言葉にかぶさるように、冷蔵庫からさっさとお茶のポットを片手に聞いてくるのに苦笑した。
父子家庭のフレンの家も父親は仕事の関係で帰りは夜遅くになる。
いつも悪いなと大きな手で俺の頭を撫でてくるフレンの父親に、チビの一匹や二匹変わらないしフレンがいた方がユーリにとってもいいだろうと、同じアパートのよしみで留守を引き受けていた。
その結果、今でも夕飯を食べに来たり何だりとしていてうちの中のもんもどこに何があるか知っている。

「ああ、よろしく」

それにしてもこいつもユーリと同じように随分たくましく育ったよな。
ずっと仲良く、というわけでもなく大ゲンカしては殴り合い取っ組み合いも少なくないが、背なんか特に仲良く同じ高さに育っている。
言ったら、嫌そうな顔するんだろうけど。
コロコロと小っちゃい二匹のチビだったのになー、とどこか懐かしい気持ちになりながら何だか嬉しそうにガラスのコップを3つ分出して注いでいく、フレンを見て感慨にふけった。

?」

「?あー俺の分はそこに置いといてくれりゃいい」

泡を流しながらボケッと見ていた視線に気が付いたように笑顔の顔を微かに傾けるフレンに、小さく溜息をついて横の調理台の上を指して、ありがとなと再度伝える。
瞬きをしながらそれを見たフレンが静かにお茶の入ったコップを一つ調理場の上に置いて、背後を通り過ぎていく。

「・・どういたしまして」

「っ、?!」

すれ違う瞬間、不意に耳元で囁くように返された。
びくっとした背中を宥める様に、肩にそっと触れて離れていく。

「っ、あのな、もっと普通に言えっての」

動揺したのを気取られない様に眉を顰めて横を通り過ぎようとするフレンに言えば、ニッコリと笑われる。

は耳が弱いよね」

「!・・次やったら問答無用で蹴り入れてやるからな」

眉を下げて、怖いなと笑って何事も無かったかのようにリビングでテレビを見ているユーリの横に、一つコップを置いて座るフレンの後頭部を見る。
くそっ、と心中で悪態をついて残りの泡をザバザバと落とす。
くすぐるように耳元に落とされた、低く甘い声に背筋が嫌にぞくぞくして耳元が熱い。




「おい、フレン」

「ん?」

テレビの方を向いていたはずのユーリの視線が、チラとガシャガシャと食器の音がうるさくなったキッチンを向いて、そしてこちらを向く。
兄であると同じはずの深い紫が呆れたような面倒そうな色を持っていて、それに気付かぬフリをしながら何だい?と話の続きを促した。

「・・あのさ、先に言っとくけどオレのいるとこで盛んなよ」

「っぶ」

危うくお茶を噴き出すところだった。
まあ、気付かれていることは分かっていたけど。
そんな直接的な事を言われることはさすがに予想出来ておらず、思わず顔が熱くなる。
いきなり何を言い出すんだと睨みつければ、胡乱気な顔が返ってきた。

「別に反対とかしねえけど」

オレが首つっこむ話じゃねえし、面倒だしとまたテレビを向きながら兄弟みたいにに育てられたユーリが控えた声で続ける。

「さすがに兄貴の喘ぎ声は聞きたくないっつーか・・」

「ユーリ!!!」

何でも無いことのようにサラっと言ってくるユーリにさすがに立ち上がって、その声を消す勢いで怒鳴れば耳に指をつっこんでいる。

「うるせー」

「ユ、」

「何だよ、どうしたんだフレン」

背後からユーリの声を少し高めにしたような声。
慌てて振り返ればTシャツの裾で手を拭いてるの姿。

「・・お前んち行っててやろうか?」

くいっと小さくズボンの裾を引っ張られたと思えば、ニヤリと笑うユーリの顔。
一気に顔が真っ赤になったフレンがユーリに掴みかかって。

「おいおい、何だってんだよ」

さっきまで何事も無く並んでテレビ見てたってのに。
いきなり始まった弟たちのバトルには呆れた溜息をついた。



◆◇*------------*◇◆


すくすくと育ったヒヨコ色の狼に食べられちゃいそうな予感。










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